Project Logical Dream Phase-2:notes.



 足利機械工業株式会社(A.M.D.)第六課研究所所属のシステムエンジニアで計画名「Project Logical Dream Phase 2」の担当主任。25 歳。
 元は大学院で有機 AI (自己進化型人工知能)を研究していたが、長宗我部にスカウトされて A.M.D. に入りデジタロイドの開発に携わることになる。
 プライドが高く潔癖性で、長宗我部の粗野ともフランクともとれる振る舞いに眉をひそめることが多かったが、デジタロイドの開発というある種人間性を問われる仕事と、男所帯の研究員との交流の中で次第に打ち解けていく。
 165 cm と女性にしては高い身長と、きりりと整った眉が目立つ。



 A.M.D. 第六課研究所所長。48 歳。
 2043 年の「Project Logical Dream」(後に「Phase 0」と呼ばれる)で最初のデジタロイドの『抽出』に携わった。
 2048 年の「Project Logical Dream」の「Phase 1」および「2」で A.M.D. の最高開発責任者(プロジェクトマネージャ)になる。



 2014 年に試験的に発布され施行された「警察官育成法」により、高校教育課程での職業訓練教育を受けた、キャリアの警察官。2016 年に京都府警に試験設置された対テロ特殊部隊「versions」に所属。2024 年に刑事六課を退職、翌年 A.M.D. に就職し、システムエンジニアになる。
 常に冷静沈着なその姿勢は冷ややかな印象を与えることもあったが、年齢を重ねて穏やかさと落ち着きを得、部下からの信頼篤い上司となっている。


 稲川技術研究所(I.N.T.E.L.)第64課研究室所属のシステムエンジニア。「Project Logical Dream Phase 2」のI.N.T.E.L.側担当主任。25歳。
 技術者としては非常に有能な技術者だが、14歳までの少女が対象という異常性愛の持ち主で、コンピュータや猫と会話するのが趣味。だが自分の問題に関する事柄以外には常識的な態度を示す上、状況判断・分析能力に秀でている。
 魅力的な顔立ちと冷ややかな眼光はしばしば女性を魅了させるが、前述の少女性愛の為に関係が持続する事は無い。
 和美とは同じ大学院で同じ研究ゼミの仲間であり、親友である。




■デジタロイド
 コンピュータやネットワークと言った論理空間(ロジック・スペース)において人間のように考え、思い、行動するソフトウェア生命体。せれ子、でゅろ子、辺太郎、亜栖論、亜栖郎、路央、ばに子などはすべてデジタロイドである。
 論理空間において可能な人間らしい振る舞いはほぼすべてシミュレートされており、また人間の脳と同じ量の処理(人間における意識的・無意識的、後天的・先天的、理性的・本能的な生命活動および思考活動)が常に同時進行しているため、後述の分散型処理システムが無ければ実現不可能といえる。
 そのため 21 世紀初頭のパーソナルコンピュータにおいてマテリアライズ(ゴースト化)するためには機能の大幅な削減を余儀なくされ、「思考」や「意識」と言った人工知能として最低限のもののみに絞られた。実際せれ子・でゅろ子に搭載されている付加機能は、ほぼソリティアに関連したものに限定されている。



 A.M.D. 第八課研究所で生成されたデジタロイド。攻撃支援・拠点防御タイプで、「ケイ」と「ティ」という二つの独立汎用型サブモジュール(使い魔)を操って活動する。コードネームは「 Barton 」。
 I.N.T.E.L. と共同で計画されたデジタロイド開発計画「 Project Logical Dream Phase 1 」で、「亜栖郎」の基礎アルゴリズムを元に開発された(とされている)。もとは軍事用だったのだが、現在では大阪府警でロジック・スペースでの実働部隊として辺太郎とともに勤務している。
 一見穏やかで物腰の柔らかい青年。言葉遣いもデフォルトで敬語を使うため好印象を与えることが多い。だが辺太郎に言わせれば「慇懃無礼で性格が悪い」らしい。
 なお、亜栖論には普段露出している人格とは全く別の人格データが内包されていると噂されている。その別の人格が露出したことが過去にただ一度だけあり、その現場に長宗我部と辺太郎が居合わせたというが、真相は明らかではない。



 I.N.T.E.L. 総合情報工学課で開発された強襲攻撃型デジタロイド。「ハイパー・パイプライン・バースト」「MMX」など多数の攻撃方法(必殺技)を持つ。I.N.T.E.L. 独自に開発した、戦闘用の「パフォーマンス」と通常用の「モバイル」の二つのモードを切り替える「スピード・ステップ・テクノロジー」を搭載し、近辺ノードに無駄な負荷がかからないよう配慮されている。
 亜栖論と同じく「 Project Logical Dream Phase 1 」において開発されたが、先行試作型で拠点防衛タイプの「路央」とは違ったコンセプトであるため、基礎アルゴリズムはほとんど継承されていない(フレームワークの一部を流用した程度)。亜栖論との開発ペースをあわせるため人格形成アルゴリズムはあまり練られておらず、根が単純で明朗快活だが怒りっぽくぶっきらぼう。ただかなりの妹思いである。


Concept by うが.


 I.N.T.E.L. の試作型で、軍事用拠点防衛型デジタロイド。だがその実はオールラウンダー型であり、どのような任務にも対応出来るよう外見と人格以外のモジュールにおいて徹底した抽象化がなされている。そのためこのデジタロイド1体であらゆるジョブをこなす事ができるが、莫大な開発費が必要となったため後継タイプは開発されずに終わることになる。以後デジタロイドは汎用性よりも専門性が重視され、強襲型の辺太郎や支援型亜栖論のように専門性の高いデジタロイドが開発されていく。ただし辺太郎とは共通の機能や必殺技も多く、「スピード・ステップ・テクノロジー」も備えている。現在は軍のデジタロイド導入テストケースとして A.M.D. の亜栖郎と共に実験的に拠点防衛用として配備されている。
 プライドの高い神経質な優等生タイプ。辺太郎を「できの悪い弟」として厳しく指導しようとしているが、せれ子に言わせれば「どっちも怒りっぽい事は変わんない」。

Concept by 祝部秀矢


 A.M.D. の試作型で、強襲型デジタロイド。背が低く、異様に発達したアフロな頭部が特徴。路央とほぼ同時期に製作されたのにも関わらずここまで外見が違うのは、亜栖郎が単体で活動するタイプではなく「エヌフォース」と呼ばれるサーフボード上のモジュールと 1 セットで活動するからである。エヌフォースは亜栖論のケイ・ティなどに相当するが、ケイ・ティがあくまでオプションモジュールであるのに対し、エヌフォースは亜栖郎の分離モジュールである。
 後継タイプであり兄弟である亜栖論やでゅろ子とは大きく外見が異なるが、その気配りが良く面倒見がいい人格者であるため、下の二人や路央からも信頼が厚い。



■西暦 2048 年のコンピュータ
 コンピュータの姿は現在と様相が大きく違う。
 まず論理的に CPU から見た場合(正確には API から見た場合)、メモリとネットワークとの区別が無い。ネットワークは広大なストレージとして機能し、ネットワークに接続されたコンピュータはそのどこにでも自由にアクセスできる。実際にはネットワーク自体ではなく、ネットワークに接続されたコンピュータ(以下ノード)の記憶装置全般にである。
 そのためメインメモリを含めたアドレス管理方法は現在と全く違う。16 ビット× 16 組のノードアドレスとそのノードのローカルメモリアドレスのハッシュ値を組み合わせたもので、現在の MAC アドレスの記述方式ににやや近い。
 そしてこれらすべてのノードは、ノードアドレスと相互の回線速度を手がかりにして相互に有機的に接続される。結果、ネットワークはあたかも一つの広大なストレージのように扱うことができる。各ノードの CPU は主に手元にあるメモリの内容を処理していくことになるが、そのデータが必ずしも自ノードに対して寄与するものではない。
 ユーザが起動したタスクは「セグメント」という単位で分割される。これはタスク内にある処理を破綻の無い程度に分割したもので、各ノードはそのセグメントに自ノードの電子署名をつけて、メモリの延長線上にあるネットワークに放出する。放出されたセグメントは、CPU の使用頻度が低いノードが受け取って処理し、署名元のノードに対して送信する。一つのタスクを複数のコンピュータが分担して行う、いわゆる「分散型コンピューティング」である。
 ネットワークの構築とジョブの分割・放出、受け取ったセグメントの処理など、すべての処理は「 NOS 」と俗に呼ばれる OS が担う。さらに、この OS もまた分散処理されて進行している。つまりこの時代のネットワークは一つのノードに一つの OS がインストールされているのではなく、全世界のネットワーク全体で一つの OS がインストールされているとみなして良い。
 この OS は全ノードが協調して行うネットワーク分散処理というシステムの特性上、スケジュール管理とメモリ保護を実装しない。つまりプリエンプティブなシステムで、ある優先順位の高いスレッドが CPU を長期間占有したり、あるアプリケーション(あるいはそのセグメント)がメモリ領域破壊を行なったりすることは十分にありうる。前者は CPU が判断してセグメントを別のノードへ放出することで解決されるが、後者のメモリ破壊(Windows における一般保護例外・不正な処理など)に対しては「対領域干渉プログラム」(俗に「ガーディアン」と呼ばれる)が常に保護対象領域を監視し、破壊や干渉が行われた場合に割り込み処理などさまざまな方法で防御する。
 このガーディアンはすべてのセグメントないしはプログラムが持っているものではなく、特に破壊されると深刻な損害を出す処理に対して適用される。たとえば金融機関の基幹業務システムや軍事データベースシステムなどである。そしてその保護対象の規模が大きくなればなるほどカバーしなければならない範囲が大きくなり、また自然発生だけでなく人為的な干渉・破壊も多くなってくるため、よりインテリジェントなガーディアンが必要になる。そのため臨機応変に対処できる人間の脳をシミュレートした大規模なガーディアンが必要とされ、デジタロイドが開発される一因にもなった(そしてその成果である「亜栖朗」と「路央」がある国の軍事データベースシステムに配備されている)。

 この時代のコンピュータは処理を別ノードに割り振ることが出来るため、全ノードの処理量は限りなく平等になる(もちろんガーディアンを適用したシステムはノードの占有数が多くなるため平等とは言い難いが)。そのため各コンピュータベンダーは性能を追い求める必要が無くなり、ある意味共産主義的とも言える。これに対して各ハードウェアおよび OS ベンダは猛反発したが、オープンソースによる開発と、無理に高性能なコンピュータを導入する必要がないという、導入経費の低さから瞬く間に普及した(これにはある日本の財閥グループのバックアップがあったというまことしやかな噂があるが、定かではない)。
 人間の思考や思想をシミュレートするデジタロイドは常に膨大な量のスレッド(処理単位)が実行されているが、これが実現したのはネットワーク回線の高速化と分散処理システムによるところが大きい。むしろこのシステムが無ければデジタロイドは生まれなかったと言える。



■"version".
 閑馬永空氏提唱によるゴースト世界観における「レイヤ」の一つに相当。
 本世界観は時系列順に "target"(1999)、"version-1"(2016)、"version-2"(2024)、"version-3"(2048) の4つのエピソードと、"Logical Dream Phase 0"(2043)、"Logical Dream Phase 1 & 2"(2048)、"The Airforce 801:Logical Dream Phase Redo"(帝国歴 0110、西暦 4096)の3つの if エピソードから成る物語。
 主エピソードのうち "version-2" における主人公が死亡するかどうかでその先の物語が変化し、生存した場合は "version-3" のメインエピソードへ、死亡した場合は "Logical Dream Phase0" の if 系エピソードへ分岐する。
 本ゴーストは「Logical Dream Phase 1 & 2」の if 系エピソードにおける「Phase 2」の時間軸にあたる。
 なお A.M.D. デジタロイド開発プロジェクトのでゅろ子担当メイン SE である長尾和美は "version-3" においても刑事として登場。またその上司である長宗我部広志は "target" と "The Airforce 801:Logical Dream Phase Redo" 以外のすべてのエピソードに登場する。
 なお、"The Airforce 801" のベースストーリー自体は妖介の創ったエピソードではない。

■「沖田」
 共通世界観のうち「The Airforce 801」以外のものに共通して存在する、日本最大の財閥グループ。日本経済を裏から牛耳る最大の勢力にして日本の要とも言える存在。有り体に言えば CLAMP の妹之山。
 "version" は基本的にこの「沖田」を中心にしたエピソードで構成される。I.N.T.E.L. および A.M.D. はどちらも沖田傘下の企業である。




■何となく話の内容に直接関係のない設定まで喋らせたような気が。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
■自分は小説家になりたくて高校〜大学あたりまで文章の訓練をしていたわけだが、それでわかった事に、自分には文才も構成力も無いという事のほか、「文章量を効果的に制御するのは非常に難しい」という事がある。
 『読むクスリ』という本の中にこんな記述がある。
「私は妻と結婚してから、今年で 50 年目になります。」
という文は最初 1 円でも売れないのだが、
「妻との 50 年」
 と簡潔な文を一発で書けるようになれば 5 万円で売れる、というものだ。
 この文も金額もうろ覚えなので正確なものではないが、要するに文章はただダラダラ書けばいいものではなく、短く簡潔にかつ過不足の無い情報を込められるようにしなければならない、という事である。
 文章量の制御とはそういう事で、うまい文章と下手な文章との間には一文に込められた情報の濃度にかなりの差がある。もちろん、そのとき表現しなければならない情報をどの文に配分するか、というのも文才の有無に関わってくるだろう。
 自分は情報量の制御がヘタだ。当初 P.L.D. はもっと短いサイドストーリーになるはずだったが、現在ではかなりの文字数を使用してしまっている。もちろん途中で話自体が肥大化した事もあるが、それでも後で見返してみれば文章量の制御が効く場面がいくつもある事がわかる。